2023年2月24日 物流の基礎知識
危険品輸送の第一歩~PROPER SHIPPING NAME~(SDS編)
化学品を輸送する際に入手が必要となる書類に“SDS”があります。 これはSafety Data Sheet (安全データシート) のことであり、製品についての情報がいくつかのカテゴリーに分かれて明記されているものです。
”化学品”と聞くと苦手意識がものすごく沸き上がる方も少なくないのではと思っています。 もちろん得意(大好物)の方もいらっしゃるでしょう。 理由はどうであれ、輸送する製品が“化学品”であれば、輸送に携わる人はSDS内容の確認という責任から逃れることはできません。
では、(残念ながら)苦手な人と(幸運にも)得意な人で、SDS内容に対しての理解に差が出たとしたら・・・。 いえ、そんなことはけして望ましいことではありません。 理解の差が後に重大な過失や事故につながる事になっては大問題です。
このように言ってしまうと苦手な人はますます尻込みしてしまうかもしれませんが、安心してください。
SDSに明記されている成分や性質、適用法令が正しく明記されているかを確認するという意味ではなく(できません、そんなこと)、輸送するにおいて必要な情報が明記されているかを確認する(見つけ出す)ことが重要となります。 その第一歩として、危険品(Dangerous Goods)か通常品かを見分け、危険品であれば PROPER SHIPPING NAME (正式輸送品目名) がどれになるかを確認することから始まります。
以前のブログでSafety Data Sheetを一部紹介させて頂きましたが、(以前のブログはこちら⇒そのペンは航空輸送上、危険物?取扱注意!なペンかもしれません)、さすが厚労省が公開しているだけあって、その時は正統派のSDS (化学品:キシレン) をご覧いただきました。
そこでは 「14.輸送上の注意」 の項目に国連番号(UN番号)の記載があると危険物扱いとなると説明しましたが、この国連番号からPROPER SHIPPING NAMEが紐づくこととなります。 但し、多種多様な化学品メーカーが自社製品のSDSを作成するにあたり、独自解釈(あえてこのように表現します)で、国連番号を割り当てているのではと見受けられることもあります。 このような個性的SDSの場合は要注意です。
<例えば、こんな内容のSDSを入手した事があります>
- 製品 : 接着剤
- SDSには含有成分として:
- トルエン85%
- ゴムコンパウンド15% - 国連番号はUN1294と明記されていました
含有成分をトルエンが85%と多くを占めているからか、UN1294 (PROPER SHIPPING NAME:TOLUENE) を割り当てたと思われます。 ですが、9.物理的及び科学的性質に“黒色低粘液”と明記があり、もはやこれはトルエンとは呼べない代物なのではと不審(?)に思い、危険物航空輸送について相談できる協会へ問い合わせたところ、この場合はUN1133(PROPER SHIPPING NAME:ADHESIVES)の割り当てが望ましいとのことでした。
ほどなくして同じメーカーの別の接着剤の輸送を依頼された際に入手したSDSには、含有成分として :
- トルエン29-33%
- メチルエチルケトン45-49%
- ラバー類20-24%
とあり、驚いたことに国連番号はUN1294(TOLUENE)、 UN1193(METHYL ETHYL KETONE)の2つが明記されていました。 (むむ、これはもしや・・・新たな謎解き挑戦状?)
もちろん経験的に 「これは、おかしい」 と秒でピンときたのでマッハで協会へ問い合わせたところ、こちらについてもUN1133 (ADHESIVES) の割り当てをしなければならないとのことでした。
そもそも、ひとつの化学品に2個以上の国連番号が割り当てられることはありません。
<危険品出荷はSDSをしっかり理解することが大切>
このようにSDSを入手したら、まずは輸送するにあたり必要な情報を確認し、さらにSDSに明記されているすべての項目に目を通すことが大切です。 不自然な表現や何かひっかかることがあればスルーせずに再度目を通し、またセカンドオピニオンも有効になると考えます。 SDSに対する理解・見解がグレーのまま出荷を進めることは大変危険な行為です。
今回は危険物にあたる化学品を輸送する場合、SDSに明記されている情報の取り扱いについて少しお話させて頂きました。 ですが、「?」 「!」となる事例は他にもまだまだあります。 次の機会に別の挑戦状(=個性的SDS)についてもお話したいと思います。
さて、今回お話した個性的SDSの化学品の取り扱いをどのようにしたのか。
もちろん依頼を受けたお客様を通してメーカーへ説明をし、ご理解頂いた上で、UN1133に修正されたSDSを発行して頂きました。 めでたしめでたし。
危険品輸送でお困りのことがございましたら、是非一度お気軽にお問い合わせください。