2024年7月26日 物流の基礎知識
【牛肉の税番は部位で異なる!?】HSコードの調べ方と品目分類について
日々、貿易実務を担当されている方にとって、“税番(=HSコード)“は実務と切っても切り離せない存在です。
今回は、そんな税番の振り方、いわゆる、”品目分類“について、お話しさせていただきます。
HSコードや品目分類に関する基礎知識から、実際にHSコードを調べる方法まで、順を追ってお伝えしますので、どうぞ最後までお付き合いください。
<HSコードとは?>
HSコードとは、HS条約**に基づいて定められた、輸出入の際に物品を分類する番号のことをいいます。
貨物を輸入する際には、輸入統計品目表(タリフ)を参照して、HSコードを特定します。
注意が必要なのは、輸出国と輸入国でHSコードの解釈が異なる場合、”輸入国の判断が優先される”という点です。
HSコードは、頭2桁を"類"、頭4桁を"項"、頭6桁を"号"と呼んでおり、
頭6桁(号)は、輸出入ともに同一、かつ、”世界共通の番号”となります。
**HS条約とは : WCO(世界税関機構/World Customs Organization)により1988年に定められた国際条約のことで、商品分類の真の国際的統一を図る目的で制定されたもの。
<品目分類とは?>
品目分類とは、輸出入される物品を、関税率表/統計品目表(=タリフ)に基づいて、適切なHSコードに分類する作業のことを指します。
とりわけ輸入の場合は、適切なHSコードに分類することで、それに紐づく関税率が決定することとなります。
品目分類を行うにあたり、前提として、以下二つの重要な原則を理解する必要があります。
一物一分類の原則 :
一つの物品は、必ず一つのHSコードに分類されなければならないという原則
提示の際の現況 :
HSコードの分類は、提示(申告)の際の貨物の現況を基に、判断されなければならないという原則
上記の原則を守ることで、とある物品について誰が品目分類を行ったとしても、必ず同じHSコードに分類されるといった一貫性が保たれることとなります。
<品目分類の手順を理解しよう>
では、品目分類を行う際、具体的にはどういった手順を踏むことになるのでしょうか?
今すぐタリフを開いて当てはまりそうなHSコードを探し出した...くなる気持ちを一旦抑えて、以下の必要な手順を確認してみましょう。
輸出入貨物の詳細情報を把握する :
HSコードを採番する為には、まず、貨物そのものの特徴を確りと把握する必要があります。
以下、具体的に抑えておくべきポイントです。
成分 : どのような材料から作られているか?
製法 : どのような工程で製造されているか?
性状 : どのような形状、大きさ、重さであるか?
用途 : どのように利用されるものであるか?
包装 : どのような包装がなされているものであるか?
”通則”に則って該当のHSコードを探し出す :
通則とは、国際貿易において物品を統一的に分類するために定められたルールのことです。
通則は1~6に分かれており、通則1~通則5は項を決定する為のルール、通則6は号を決定する為のルールで、通則1で決まらなければ通則2、通則2で決まらなければ通則3、通則3で決まらなければ通則4...という順番でルールを適用していきます。
通則1 : 項および各注の規定
通則2 : 項の範囲を拡大する規定
通則3 : 複数の項に該当する場合の所属決定の規定
通則4 : 該当する項がない場合の所属決定の規定
通則5 : 収納容器、包装容器に関する規定
通則6 : 号の決定方法
ここでは通則ごとの詳細な説明は割愛しますが、
ポイントとして、多くの物品は通則1で分類が決定するといえるほど通則1が重要なルールとなる点、抑えておいてください。
(引用元)税関「関税率表の解釈に関する通則」 https://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/data/tuusoku.pdf
<具体例で理解を深めよう ~牛肉のHSコードを考える~>
では、今までの内容を踏まえて、ここからは実際に品目分類を行ってみましょう。
今回は、海外から日本へ”焼肉用にスライスされた骨なしカルビ(牛肉)”を輸入すると仮定して、そのHSコードをどのように決定すれば良いかについて考えます。 (どうしてカルビなのかという疑問が浮かんだ方がいらっしゃるかもしれませんが、単に筆者が焼肉のカルビが好きという理由ですので、あしからずご了承ください。)
手順として、貨物の詳細情報を把握する必要がありました。
とりわけ、牛肉は、"貨物の温度帯" "骨のありなし" "部位"によってHSコードが異なる為、対象貨物がどのような特徴を持つかをきちんと確認する必要があります。
今回の貨物は、以下の特徴を持つとして、仮定します。
貨物の温度帯 : 冷蔵品
骨のありなし : 骨なしの部分肉
部位 : ばら肉**
**部位について : カルビは一般的にアバラ周辺のばら肉を指すので、ばら肉に該当すると仮定します。実際に輸入する際は、国内分類冷規に記載された規定に沿って部位の特定を行う必要があります。詳細は下記引用元のリンク先(国内分類例規)をご参照ください。
(引用元) 税関「国内分類例規:肉類の調製品の分類基準について」 https://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/data2/02rd.pdf
加えて、通則についても確認する必要がありました。
通則1では、「物品の所属は、項の規定及びこれに関係する部又は類の注の規定に従い~」と記載があります。
下の図は、実行関税率表の一部を掲載しております。
0201項の規定として、「牛の肉(生鮮のもの及び冷蔵したものに限る。)」との記載があり、今回の貨物の特徴にぴったりと当てはまっていることがわかります。
少し下に目をやると、「骨付きでない肉」という号の規定が現れ、こちらも特徴に当てはまることがわかります。
更に下に目をやると、部位ごとに統計細分が分かれており、HSコードが異なるようです。
では、今回の貨物にあてはまるのはどの部位でしょうか? そう、ばら肉ですので「ばらのもの」が正解です。
すなわち、HSコードは、"0201.30-030"となります。
(引用元)税関「輸入統計品目表(実行関税率表)」 https://www.customs.go.jp/tariff/2024_04_01/data/j_02.htm
上記の例からもわかるように、同じ牛肉でも、貨物の特徴によって分類されるHSコードが異なります。
今回の牛肉の場合は、いずれの部位も同じ関税率でしたが、貨物によっては、HSコードの分類先により関税率も大きく異なる、というケースも多々あります。
適切な品目分類は正しい関税の算出に欠かせない要素です。
その為にも、輸入貨物の詳細をきちんと把握し、通則というルールに則って、確りと品目分類を行う必要があるのです。
<まとめ>
いかがでしたでしょうか?
貨物の輸出入において品目分類に対する正確な理解は非常に重要であるものの、通関分野における深い知識を要する為、時に、自力で適切な品目分類を行うことが困難なケースも多々あります。
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