2023年9月7日 物流の基礎知識
【やさしく解説】外国貨物を保税地域に入れる理由
日々の貿易実務において、外貨(がいか)、内貨(ないか)、保税(ほぜい)、などといったワードを耳にされる機会があるかと思います。
今回は、それらの用語について、解説をしていきたいと思います!
法令用語がちらほら出てきますので、少々堅苦しい内容になるかもしれませんが、どうぞ最後までお付き合いください。
<外貨(がいか)、内貨(ないか)、保税(ほぜい)とは?>
正式には、外貨は「外国貨物」、内貨は「内国貨物」といいます。
一見、外国貨物と聞くと、海外にある貨物のことを指すような気がしますが、そうではありません。
外国貨物・内国貨物のいずれも、日本国内にある貨物を指し、その貨物がどういう状態にあるかを言い表した言葉になります。
☝ポイント
外国貨物 : 輸出許可後、または、輸入許可前の貨物のこと
内国貨物 : 外国貨物以外の貨物のこと
因みに、輸出・輸入は、関税法上、以下のように定義されています。
輸出 : 内国貨物を外国に向けて送り出すこと
輸入 : 外国貨物を本邦(日本)に引き取ること
では、「保税」とは、どういったことを表す言葉なのでしょうか。
保税という言葉に関しては、関税法上に定義がある訳ではありませんが、以下のような意味合いで用いられます。
☝ポイント
保税:本邦(=日本)にある貨物が外国貨物であり、税関の監視下にある状態のこと
すなわち、「関税や消費税の納税を保留した状態」を「保税」ということができます。
こうした外国貨物(保税貨物)は、原則として、保税地域という場所以外に置く事ができないので、注意が必要です。
保税地域については、次の項目でご説明をしていきます。
<保税地域の種類と主な機能について>
保税地域とは、外国貨物の蔵置 ・ 加工 ・ 製造 ・ 展示などができる場所のことです。
なお、保税地域は、その機能によって、「指定保税地域」 「保税蔵置場」 「保税工場」 「保税展示場」 「総合保税地域」の5種類に分けることができます。
各種類の主要な機能については、以下の表をご参考ください。
引用(税関HP) : https://www.customs.go.jp/hozei/pdf-data/hozei_chiiki.pdf
保税地域の目的は、「輸出入貨物を法の規制下に置くことにより、秩序ある貿易を維持し、関税などの徴収の確保を図るとともに、貿易の振興、及び、文化の交流などに役立てること」とされています。
例えば、最近のトピックスでいうと、2025年に開催が予定されている日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場が、2023年3月に保税展示場の許可を取得しています。
保税展示場では、展示品等の外国貨物が、輸入(=外国貨物を本邦(日本)に引き取ること)されず、そのまま外国へ送り戻される場合、関税を課されることなく(=保税状態のまま)展示を行うことができる為、こうした国際的な展示会等の催しにおいて、参加国の経費削減、及び、文化交流に寄与することができるのです。
<保税蔵置場とそのメリットについて>
前の項目で保税展示場の例を出しましたが、「保税蔵置場」も同様に保税地域の一種のことを指し、外国貨物の積卸し・運搬・蔵置をすることができる場所として、税関長が許可した場所のことをいいます。
具体的にいうと、「港湾近くの倉庫」や「空港近くの上屋」などがそれに該当します。
前述した通り、外国貨物(=輸出許可後、または、輸入許可前の貨物)は、原則、保税地域以外に置く事ができないので、保税蔵置場に一旦蔵置し、通関手続きを踏んだあと、輸出入を行うのが一般的です。
具体的な貨物の流れについては、以下の図をご参考ください。
実は、保税蔵置場は、コスト削減や在庫リスクの回避などのメリットを与えてくれる場所とも言えます。
以下、具体的なメリットを記載します。
☝メリット① : 輸出許可後・輸入許可前貨物の蔵置中は関税や消費税がかからない
蔵置期間中は外国貨物扱いとなり、貨物にかかる関税や消費税などが課されない為、キャッシュフロー管理における負担軽
減が見込まれます。
☝メリット➁ : 梱包や簡単な加工ができる
蔵置中に梱包や簡単な加工を施すことも可能です。 作業をするには税関長の許可が必要(NACCSにて申請可能)ですが、
「点検」「包装」「シール貼り」「値札付け」等の付帯作業を、外国貨物のまま行うことができます。
<保税蔵置場と保税倉庫の違いについて>
貿易実務上、「保税倉庫」という言葉をよく耳にされるかもしれませんが、保税蔵置場とどのような違いがあるのでしょうか?
実は、「保税蔵置場」と「保税倉庫」は、どちらも外国貨物を保管する場所を指す言葉として使われており、意味合いに違いはありません。
「保税蔵置場」という言葉は、関税法で定められた正式な名称であるのに対し、「保税倉庫」は、一般的に意味が通りやすいことから、実務上で広く使われている表現です。
あくまでも指すものは同じですが、輸出入許可申請書類等では、正式名称である「保税蔵置場」という表現が採用されています。
因みに、コンテナヤード(=港)に到着した輸入貨物を、 未通関の状態で近隣の保税倉庫まで運送するケースなどがあるかと思いますが、このように、外国貨物を保税地域から保税地域へ運送することを「保税運送」といい、同義として、「OLT(=OVER LAND TRANSPORT)」という言葉がよく用いられます。
保税運送を行う場合、税関より保税運送の承認を得る必要があります。
<保税倉庫をお探しの場合>
いかがでしたでしょうか?
本日は、貿易実務における基本的な用語について解説させて頂きました。
貨物の輸出入を行う際には、保税地域への搬入が必須とのことをお伝えして参りましたが、
私ども商船三井ロジスティクスは、日本国内のみならず、海外各地にも、自社運営の保税倉庫を多数所有しております。
貨物の保管場所についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、是非とも一度、お問い合わせください。