2022年7月29日 物流の基礎知識
Surrender B/LとSea Waybillについて
MLG BLOGにお越しいただき有難うございます。
前回のブログでは、「B/L(Bill of Lading)とは何か」について解説いたしました。
貨物と同じくらい大事!?海上B/Lについての基礎知識
今回は同じB/Lの中でも異なる性質のSurrender B/L(サレンダー)と、
Sea Waybill(Waybill)の違いについて解説いたします。
<Surrender B/L(Express Release)とSea Way Billの違い>
「Surrender B/L」と「Sea Waybill」の違いは、
「Sea Waybill」には信用統一規則(UCP600)や商法で規定があるのに対し、「Surrender B/L」には一切の規定がないということです。
そもそも「Surrender B/L」の「Surrender(サレンダー)」とはどういう意味でしょうか?
「Surrender B/L」とインターネットで調べると、
「元地回収されたB/L」といった説明が出てくるかと思います。
すると次は「元地回収」とはどういう意味か?という疑問がわいてきます。
では「Surrender」という言葉だけで調べてみましょう。
すると「引き渡し」や「放棄する」という意味が出てきます。
(参考:Weblio 英和・和英辞典)
では「何を」SURRENDER = 放棄 するのでしょうか?
<Surrender B/L サンプル>
<B/L = Bill of Ladingの性質から考える>
前回学んだ通り、B/L=Bill of Ladingには4つの働きがあります。
- 貨物の受領証
- 輸送契約の証拠
- 貨物の引渡し証
- 流通性のある有価証券(所有権の移動)→L/C決済に必要
Surrender B/Lは、この全ての権限を「SURRENDER = 破棄」して、貨物のリリースを先行させる目的のみのB/Lです。
つまり適用される国際条約、国内法、国際ルールが一切ない便宜的な方法です。
その結果、事故や紛争が発生するとその解決に困難を伴います。
従い物流業者としては、できる限り避けるべきとアドバイスをさせていただいております。
<Sea Waybillの活用>
国連や一般財団法人日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)は、リスクを低減させ、
電子化を促進するためにも「Sea Waybill」の利用を推奨しています。
ただし、Sea Waybillには本来B/Lが持つ「荷為替手形の担保」としての機能がないため、有価証券ではありません。
そのため、L/C取引や荷為替手形による決済方法には、原則使用ができませんのでご注意ください。
Sea Waybillの書式はB/Lと同じですが、非有価証券であることを示す「Non-Negotiable」(流通性がない)の文言が記載されています。
Surrender B/L(Express Release)は、主にトランジットタイムの短い中国・近海アジア航路での取引で使用されます。
<Sea Waybillサンプル>
一方で、近年はSea Waybillは商法で規定されている他、「CMI統一規則(万国海法会/CMI 「海上運送上に関する統一規則」)」の摂取により、輸出入国間での標準的な運用が明確化できるため、国連もその利用を推奨しています(UNECE勧告12号)。
また、B/Lの本来的機能を放棄しているSurrender B/L(Express Release)の要求に対しては、
船社、NVOCCともにSurrender Fee(元地回収手数料)を徴収するのが現在一般的になっており、Sea Waybill利用への誘導がますます顕著になっています。
<正しい理解で安全な輸送を>
事故・トラブルを未然に防ぎ、安全に輸送をするには、物流に関わる一人一人が正しく物流の仕組みを理解をすることが不可欠です。
商船三井ロジスティクスは物流のプロフェッショナルとして、今後も物流の基本情報や、最新の物流事情などをお届けしてまいります。
物流への疑問点などございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。