MLGウェビナー「LA駐在員が今を伝える!リアルな北米物流事情」を開催しました!
2022年9月8日(木)に、第2回MLG特別ウェビナー 「LA駐在員が今を伝える!リアルな北米物流事情」 を開催しました。お陰様でたくさんのお客様にご視聴頂きました。 誠にありがとうございました。
2022年は北米西岸での労使交渉が行われる年に当たり、また米中貿易摩擦、新型コロナウイルスの蔓延から継続している北米港湾や内陸輸送の物流混乱の状況は日々変化しています。
今回のウェビナーでは、商船三井ロジスティクスの米国現地法人MOL Logistics (USA) Inc. ロサンゼルス支店長が現地状況をレポートし、これまでの物流混乱に至った経緯や現在の様子、また今後の見通しについてご説明しました。
<労使交渉とこれまでの物流混乱の流れ>
北米西岸労使交渉は、アメリカ西岸の港湾施設で働く労働者組合である“ILWU”(International Longshore and Warehouse Union)と雇用主を代表する団体である“PMA”(Pacific Maritime Association)とで行われる、労働協約の改定交渉のことを指します。
現在の北米西岸労使協約は2022年7月1日に失効し、新たな労使協約を締結すべく、労使間で今もなお労使交渉が続けられています。過去の西岸労使交渉を振り返ると、2014年から2015年に掛けて実施された前回交渉では、港湾オペレーションのスローダウンが行われるなど、物流に大きな混乱を招いた点は記憶にも新しいかと思います。
今回の労使交渉における大きな争点としてターミナルの自動化が挙げられますが、前回交渉でも機械化が取り上げられていたことを踏まえると、今回の労使交渉も容易には決着しないものと思われます。
物流混乱の状況を語る上では様々な要素を見ていく必要があります。
2019年に米中間で貿易摩擦が起こり、貨物が減ったことを受けて、新造コンテナの生産量を減らすなどをし、余剰コンテナの整理が行われました。翌2020年には世界的に新型コロナウイルスが蔓延し、各地でロックダウンが発生して生産が一時的にストップすると、航空、海上サービスでは運休や減便、また機材の小型化が進められ、輸送スペースが大きく減少しました。
人という点で見ても、コロナ禍では早期退職者が多く出たこと、また越境が制限されたことでアメリカへの移民が減少したこともあり、ドライバーや物流関係者の労働力不足が発生します。
コロナ禍での巣ごもり需要の高まりや、コロナからの回復による生産の正常化が進むにつれて貨物量が増えていくものの、コンテナ不足、スペース不足、労働者不足といった点が複合的に重なり、需要を支えるだけの環境ではなく、滞貨や沖待ちといった混雑状況が発生し、今も継続しています。
<アメリカの現在の状況は> (2022年9月末情報)
アメリカの現在の状況はどうでしょうか。西海岸、東海岸、内陸部の3つに分けて見ていきます。
西海岸での沖待ちの状況は改善に向かっています。ロサンゼルス/ロングビーチ港では2022年1月の段階で約100隻に上る待機船がありましたが、9月末時点では1桁台にまで減少しています。一方で内陸輸送を担う鉄道への接続が混雑しており、ターミナル自体の混雑は継続しています。
東海岸は継続して混雑しています。東海岸の港は、欧州や南米など大西洋航路の貨物が多くを占めているのですが、欧州における港湾ストライキや異常気象により船のスケジュールが大きく乱れ、また西海岸での労使交渉によるストライキや混雑悪化を恐れたアジア発貨物の一部が東海岸に流れてたこともあり、混雑状況は悪化しています。
内陸部も状況は芳しくはありません。9月16日を期限として交渉が進められていた鉄道での労使交渉は、期限間近となった9月15日に暫定合意に達したことで、ひとまず鉄道でのストライキの恐れは解消されました。一方で、①鉄道貨車が不足していることで、内陸部への輸送量が限られて港湾地区ターミナルでコンテナの滞留が起きる、②内陸部に運ばれた貨物も、シャーシ不足の為に、鉄道ランプ(貨物駅)から運び出すことが出来ずに鉄道ランプで滞留する、と言う状況にあり、まだまだ状況が好転するには時間が掛かりそうです。
<今後の見通しは?>
これまで混雑状況の今を見てきましたが、今後はどのように流れていくのかを、3つのキーワードで考えていきます。
1. 労使交渉
西岸港湾の労使交渉の行方は大きなポイントです。前回2014-2015年の労使交渉時における反省から、労使双方がサプライチェーンの維持を努めることを宣言しており、また政府は混乱が発生しないように関与をしていることもあり、現時点で大きな混乱は発生していません。ただ、ターミナル自動化の交渉が進んでいるとの情報もなく、シアトル/タコマやオークランドにおいて、スローダウンが発生しているとの報道もあり、まだまだ予断は許さない状況です。
2. 労働者不足
労使交渉以前から続いている混雑状況を引き起こしている要素の一つである労働者不足に関しては、コロナからの回復により、徐々に労働者数の一朝一夕で解決するものでもなく、混雑状況がしばらく継続していく懸念があります。
3. 東海岸の状況
大西洋を挟んだ欧州におけるストライキや異常気象によるスケジュールの乱れを受けて、東海岸の港湾は既に混雑を起こしており、引き続き英国フェリクストウ港やリバプール港でのストライキも実施されていることから、混雑に拍車が掛かるかと思われます。
また、西岸港湾労使交渉次第では、西海岸を回避する動きが高まり、東海岸の状況を更に悪化させる可能性もあります。
<代替輸送のご提案>
そうした混乱状況を回避する代替輸送として、当社サービスを3点ご紹介します。
混雑する米国西海岸港を回避し、メキシコまで海上輸送を行い陸揚げ、米墨国境で通関して米国内へ輸送するものになります。通関等事前確認が必要となりますので、当社営業担当にご相談ください。
3. 北米各地発着の航空輸送サービス
西海岸のみならず、中西部、東海岸へのダイレクトの航空輸送サービスもご利用いただけます。