2022年10月14日 物流の基礎知識
何で予定フライトに載らない? 航空機の離陸重量のハナシ
この前は載ったのに、今回は載らなかった。いつもは載るのに、今日は載らなかった。 ある時期になると、全く載らなくなる。
航空貨物の出荷手配で、こういった経験、ありませんか?
搭載予定貨物が多かったといえばそれまでですが、フライト毎に載せられる貨物量は毎回異なります。
旅客機を中心に通常の手順ではどのような要素で搭載貨物量が決まるのか簡単にご紹介します。
<最大離陸重量>
航空機には、これ以上重いと離陸できない「最大離陸重量」が設定されています。 この最大離陸重量を超えてしまうと、そもそも離陸できないため航空機を動かすことができません。 フライト時には諸条件を考慮した「最大許容離陸重量」が設定されますがこれは後ほど説明します。
この合計を最大離陸重量以下に収める必要があります。
なお、長距離国際線で使用されるBoeing 777-300ER型機の最大離陸重量は約350トンです。 機体自体の重量は約160トンですので、何も制約がない場合、残りの200トン弱を乗客・貨物・燃料で分け合うことになります。
旅客機の場合、燃料と乗客がまず優先され、残った枠に貨物を載せられるだけ載せていきます。
ここにも優先順位があり、①乗客の手荷物、②Priority料金が適用する貨物、③その他貨物となっています。
(航空会社によっては郵便がありますが割愛します)
この優先順位を活用したものが緊急輸送サービス「ハンドキャリー」です。 これは、乗客の携帯貨物として航空機に搭載し、到着空港の税関窓口で業務通関を行うことを意味します。
ちなみに貨物機の場合、乗客はおらずフライト時間が多少伸びても問題ないため、貨物量を優先し燃料を減らした結果途中で給油する飛行計画となっているものもあります。
<燃料搭載量>
貨物搭載量が減る原因として、他に「燃料搭載量」の変動も要因の1つとされます。
どれだけ燃料を載せるかというのは、フライト毎の天候等に左右されます。
例えば太平洋を横断飛行するフライトの場合、偏西風の強さや位置によって必要な燃料搭載量が異なります。
同じ発着地でも東行き、西行きによって偏西風の影響で必要な燃料が全く異なります。
また、目的地の天候が悪い場合も、燃料搭載量を増やさなければなりません。
離陸する際には、目的地までの燃料+αを積んでいくわけですが、目的地悪天候の場合、着陸待ちや代替着陸地までの飛行も考えいつも以上に燃料を搭載することになります。
地政学的影響を受ける場合もあります。 今年3月に欧州便の飛行ルートがロシア上空を回避する大回りの経路に変わり、燃料搭載量が増えました。 その影響で大量の滞貨が発生したのは記憶に新しいところです。
<最大許容離陸重量>
最大離陸重量はカタログ的に決まっていますが、フライト毎には「最大許容離陸重量」が設定され、これが最大重量となります。
最大離陸重量から以下の要因を考慮し引き算で算出されます。
・滑走路長
・天候 (滑走路が濡れているか、積雪量、風向・風力、気温)
これは、離陸中止した際に滑走路内で止まれるかが基準になっています。
滑走路が短ければ、ブレーキに使える距離も短くなりますので、短い距離で離陸速度まで加速する必要があり、加速力を上げるために機体を軽くしなければなりません。 滑走路が濡れている、積雪があった場合は制動力が下がりブレーキ距離が長くなりますので、加速力が重要になります。
その他にも、気温が高い、空港自体が標高の高い位置にある場合は、エンジンの性能が落ち、加速力も落ちますので、同様に機体を軽くしなければなりません。
現在は運休中(2022年10月時点)ですが、アエロメヒコ航空のメキシコシティ→成田便は、特に5月のゴールデンウィーク期間は貨物の搭載が難しいフライトでした。 西向き長距離飛行のため燃料が大量に必要な他、メキシコシティ空港が標高2200mという高地にあり、気温は夜でも25℃近くと高く、客席も満席、乗客手荷物を載せるだけで精一杯という悪条件が重なる状況でした。
以上、マニアックな説明となってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
予定のフライトに貨物が載らないと、お客様に大変ご不便をお掛けし、物流業者としては申し訳ない状況ではありますが、一方で現場の方々は安全第一の上で、一つでも多く貨物を搭載できるよう、運航されていることをご理解いただけますと幸いです。
弊社ではできるだけこのような状況を回避し、安全・迅速にお届けできますよう心がけておりますので、より一層のご愛顧をよろしくお願いいたします。