2022年8月19日 物流の基礎知識
そのペンは航空輸送上、危険物?取り扱い要注意!なペンかもしれません
油性ペン、水性ペン、マジック、サインペン、筆ペン、蛍光ペン。
誰しもが一度は家庭や学校、会社等で使用したことのある馴染みのペンが、実は航空輸送では危険物の扱いとなるかもしれません。危険物と認識しないまま、適切な梱包をせず、申告無しで送ってしまい、思いもよらない大問題へつながるケースがあります。
製品の輸送をする際には、その製品が危険物であるかどうかを確認します。
危険物である場合は、規則に沿って正しく梱包し、航空会社へ詳細を連絡した上で危険物申告書を提出することが必要です。
今回は、ペンの航空輸送の取扱いに関する注意事項について、ご紹介します。
< ペンのインクの性質を確認する >
もちろん全てのペンが危険物となるわけではなく、制限なしで送れるものもあります。
では、何を確認すれば、危険物であるかどうかの判断ができるのでしょうか。
まず、ペンのインクの性質を確認することが重要です。
その為には最新のSafety Data Sheet(安全データシート、以下SDS)を、化学製品を製造しているメーカーより取り寄せる必要があります。
ご参考まで、こちらが厚生労働省のホームページ上に掲載されているSDSのサンプルです。
ペンのインクには、よく、キシレンという成分が含有されています。今回はキシレンのSDSを例として、みていきましょう。
最も気を付けるべきポイントは、そのインクが『引火性液体』であるかどうかです。なぜなら、インクが引火性液体である場合は、多くのケースで危険物の扱いとなり得るからです。
キシレンは、SDS上、物理化学的危険性は引火性液体と記載がありますので、危険物の扱いとなり得ます。
さらには、「14.輸送上の注意」における国連番号の有無で、危険物の扱いとなり得るか判断ができます。
国連番号とは、危険物に国連が番号をつけ、その物品が何であるか、どのような危険性があるか、またどのように取り扱うべきかをルール化したものです。
キシレンは、14.輸送上の注意に国連番号が記載されていますので、危険物の扱いとなり得ます。
確認をしないまま、申告無しで危険物を輸送した場合は、お客様にも国土交通省より罰金が課される事態にもなり得ますので、航空貨物代理店より提示を求められた際には必ず入手下さい。
キシレンSDS 出典:厚生労働省ホームページ (URL: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_DET.aspx )
< ペンの構造とインクの状態を確認する >
SDSを取り寄せて性質を確認した結果、インクの性質が例えば引火点が24℃と明記されていた場合、危険物としての輸送手配をしなければならないと考えるのはまだ早いです。
実は、ペンの構造によっては、特別規定で危険物とはならない場合もあります。
(ケース1)
ペンに充填されている引火性インクがペン内部のフェルト素材にしみ込んでいる(ぺんを振ってもちゃぷちゃぷしない)場合。
⇒ しみ込んでいるインク量が10ml以上の場合は、危険物となりますが、インク量が10ml未満であれば、特別規定で危険物ではなくなる場合があります。
(ケース2)
引火性インクがフェルト素材等にしみ込んだ状態ではなく、液状でペン内部に充填されている(ペンを振るとちゃぷちゃぷする)場合。
⇒ 取り寄せたSDSにインクの情報として危険物と定義されていれば、紛れもなく危険物としての輸送を手する必要があると考えられます。
このように、ペンの構造とインクの状態も判断基準になります。
< 適切な梱包と正しい申告で輸送可能 >
危険物となる場合でも、日本国内で流通している新品のものは、しっかりと密閉されているので、ペン自体が容器(内装容器)とみなすことができるものもあり、さらに外装容器への梱包が必要とはなりますが、適切な梱包と申告を施すことにより航空輸送が可能となります。
これまでもペンが危険物にあたるかもしれないことを知らずに輸送を依頼してこられ、送付頂いた書類や資料の中に「もしや」「まさか」と思われる疑わしい明記を発見して、事前に無申告輸送を回避したケースも過去にはありました。
そのような時、危険性があることをたっぷり説明させていただいても、「え?」「は?」という反応をされる方も中にはいらっしゃいます。それでもしっかりとご理解、ご納得いただけるまで、説明を重ねていくしかありません。
想像してみてください。
もし皆さんが、指折り数えてドキドキ(&ワクワク)しながら楽しみにしている旅行で飛行機を利用する事となったとして、座席の下の貨物室に適切な梱包、申告をされていない不安定な危険物が潜んでいるとしたら・・・。
違う意味でのドキドキ(&ハラハラ)を経験することになるかもしれません。
航空輸送は注意を怠ると、人命にかかわる大事に至る恐れがある事を常に意識して取り扱うことが重要となります。
ペン一つでここまで大袈裟に書かなくても・・・と震えながらお読みいただいている皆様、適切な対応をすれば輸送は可能です。
< 思わぬ事故を防ぐために >
様々な国へ様々な商品が日々航空輸送されていく中、不注意や確認不足から事故が絶えません。安全、安心な輸送を実施する為には、誰かがではなく、誰もが細心の注意を払うことが重要です。
ペン一つをとっても、地上では大事がなくても、環境が大きく違う上空では取り返しのつかない悲惨な事故につながる恐れがあることを忘れないでください。
また同一の危険物でも航空便と船便とでは積載の有無、規制内容についても異なるケースがあります。
危険物の輸送に関して、ご不明な点や、お困りのことがございましたら、当社へお気軽にご連絡ください。