2024年9月20日 物流の基礎知識
【深堀】CIF、CFR、CIP、CPT違いや注意点は?インコタームズC条件を詳しく解説(早見表つき)
先日公開した「【深堀】FOB、FCA、FASの違いや注意点は?インコタームズD条件を詳しく解説(早見表つき)」、「【深堀】DAP、DPU、DDPの違いや注意点は?インコタームズD条件を詳しく解説(早見表つき)」ではインコタームズF条件とD条件を詳しくご説明しました。
今回は「インコタームズ深堀シリーズ」の最終章として、C条件について詳しく解説いたします。
- E条件 「EXW」
- F条件 「FOB」「FCA」「FAS」
- C条件 「CIF」「CFR」「CIP」「CPT」
- D条件 「DAP」「DPU」「DDP」
インコタームズ2020では、C条件は「CIF」「CFR」「CIP」「CPT」の4つに分類されます。
C条件の特徴は、売主が輸送費を負担する一方で、リスクの移転ポイントが輸送費の負担ポイントと異なる点にあります。F条件やD条件では費用負担とリスク移転が同じ地点で行われていましたが、C条件では異なる地点でリスクが移転することに加え、保険に関する規定も含まれています。
それでは、各C条件について詳しく見ていきましょう。
<CIF (Cost, Insurance and Freight: 費用・保険料・運賃込み条件)>
CIFは、売主が貨物を輸出する際、仕向港までの輸送費用と海上保険料を負担します。売主は、指定された仕向港(地)までの運賃と保険を手配します。
リスクの移転は、船積港で貨物が本船上に置かれた時点で買主に移ります。
◆CIFの通関について
輸出通関手続きは売主が責任を持って行いますが、輸入通関は買主の責任範囲となります。
◆CIFの注意事項について
CIFに限らずですが、C条件は運賃負担とリスク移転が異なることをまず覚えておく必要があります。
また、保険の付保は売主の責任範囲となっておりますが、インコタームズ2020ではでは付保する保険は、協会貨物約款で定められたICC(C)に従い付保することとなっています。
ICC(C)の補償内容が買主にとって十分ではない場合、売主が付保している保険とは別に買主側でも別途保険を付保する場合もあります。
*協会貨物約款について詳しく知りたい方はこちらのサイトが参考になります⇒https://www.ms-ins.com/business/cargo/gaiko/assumption.html
また、保険会社の選択は売主に権限があるため、買主側が保険会社の信頼性について確認することは難しい場合があります。
CIFは仕向港(地)までの費用負担を売主が負担しますが、仕向港のどこの地点までが売主の費用負担の範囲なのか、着岸以降・荷揚げも含まれているのか等、事前に確認し、売主/買主の双方が同じ認識をもっておくことでトラブルを防ぐことができます。
<CFR (Cost and Freight: 費用・運賃込み条件)>
CFRは、売主が貨物を輸出する際、仕向港までの輸送費用を負担する条件です。売主は、指定された目的地までの運賃を手配します。また、リスクは船積み港にて、貨物が本船上に置かれた時点で買主に移ります。
CIFとの違いは売主の責任範囲の中に保険の付保が入っていないことです。
◆CFRの通関について
輸出通関手続きは売主が責任を持って行いますが、輸入通関は買主の責任範囲となります。
◆CFRの注意事項について
CFRについても、運賃負担とリスク移転が異なることをまず覚えておく必要があります。
また、CIF同様に、CFRも仕向港までの費用負担を売主が負担しますが、仕向港のどこの地点までが費用負担の範囲なのか、着岸以降・荷揚げも含まれているのか、事前に確認し、売主/買主の双方が同じ認識をもっておくことでトラブルを防ぐことができます。
<CIP (Carriage and Insurance Paid to: 輸送費・保険料込み条件)
>
CIPは、売主が指定された場所までの輸送費と保険料を負担する条件です。
CIFと異なる点は、費用負担や保険のカバー範囲もより広くなります。売主が発地国側で荷送人に貨物を引き渡すところで、リスク移転が買主にうつります。
また、CIFは水路を想定した条件となっておりますが、CIPは輸送手段を問わないため、航空輸送やコンテナ船輸送にも適用可能です。
◆CIPの輸入通関について
輸出通関手続きは売主の責任範囲ですが、輸入通関は買主の責任範囲となります。
◆CIPの注意事項について
CIPでは、ICC(A)に基づく保険が付保され、CIFのICC(C)よりも手厚い補償が提供されますが、それでも不十分な場合、買主は追加保険を検討・付保することがあります。
また、保険会社の選定は売主に委ねられるため、CIFと同様に保険会社の信頼性確認が難しい点がデメリットととして挙げられます。
<CPT (Carriage Paid to: 輸送費込み条件)>
CPTは、売主が指定場所までの輸送費を負担し、リスクは貨物が運送人に引き渡された時点で買主に移ります。
CIPとの違いは、保険が含まれていない点です。
◆CPTの通関について
輸出通関手続きは売主の責任範囲ですが、輸入通関は買主の責任範囲となります。
◆CPTの注意事項について
保険が含まれていないため、買主は自身で保険手配を行う必要があります。リスクの移転タイミングもCIP同様、運送人への引き渡し時点であることを理解しておく必要があります。
おまけ<インコタームズC条件の早見表>
|
CIF |
CFR |
CIP |
CPT |
輸出梱包 |
売主 |
売主 |
売主 |
売主 |
輸出通関 |
売主 |
売主 |
売主 |
売主 |
船積み |
売主 |
売主 |
売主 |
売主 |
国際輸送 |
売主 |
売主 |
売主 |
売主 |
輸入国荷揚 |
売主*1 |
売主*1 |
売主 |
売主 |
輸入通関 |
買主 |
買主 |
買主 |
買主 |
輸入国⇒指定場所配送 |
買主 |
買主 |
買主 |
買主 |
指定場所での荷下 |
買主 |
買主 |
買主 |
買主 |
海上保険 |
売主 |
- |
売主 |
- |
*1:仕向港までとなっているが、仕向港のどこまでなのかによるので、荷揚げが含まれている場合もある。本船の岸壁着までとする場合は予め買主と認識を合わせておきましょう。
<運送契約前にC条件のリスクと責任範囲を確認しましょう>
C条件では、売主が輸送費や保険の一部を負担する一方で、貨物が運送人または本船に積み込まれた時点でリスクが買主に移行するという共通点があります。
輸送方法が(航空便・コンテナ船・在来船)何か、また取引の内容やリスク、費用負担を考慮し、輸送契約時に適切な条件を選ぶことが重要です。
また、CIFやCFRで解説した通り、どの地点までの費用を負担するかによって、範囲が異なる場合もあります。そのため、輸送契約時には、売主と買主の間で認識をしっかり共有することが必要です。
以前F条件やD条件のブログを読んでいただいたお客様から、「記事に記載されているインコタームズの範囲と、自社で手配(契約)している内容に差異があるのですが、これは正しいのですか?」といったご質問をいただいたことがありますが、ご安心ください。インコタームズは規則であり法律ではありませんので、双方が合意し、輸送が円滑に進んでいるのであれば問題ありません。
これで、「インコタームズ深堀シリーズ」は終了となりますが、少しでも皆様のお役に立てたなら幸いです。
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