2024年7月12日 物流の基礎知識
貨物がコンテナに積込まれるまで –バンニングの全貌 –
<バンニングとは?>
港で目にする無数のコンテナ。 どれも、世界中から運ばれてきた、または運ばれようとしている貨物で満たされています。しかし、これらの貨物がどのようにコンテナへ積み込まれているのか、考えたことはありますか?
実はコンテナを港へ持っていく前に、輸出する貨物をコンテナに積込む重要な作業が行われています。この作業は、物流用語では「バンニング(Vanning)」と呼ばれています。
私たちが海外に物を送るとき、まずは段ボール箱に詰めて郵便局に持ち込みますよね。海上輸送では、その段ボール箱がさらに巨大な1つのコンテナに積み込まれ、船で海外へ運ばれます。
しかし、その積み込み方にも一工夫必要となります。海上輸送中は波や天候の影響で船は揺れるため、貨物が動いて損傷したり、荷崩れが起きたりしないよう考慮する必要があります。また、輸出先で貨物を取り出しやすいよう積載順についても配慮し、慎重に積み込みが行われます。
このブログではバンニングの流れや方法についてご紹介します。
<バンニング作業の流れ>
では、早速バンニングの全プロセスを一緒に見ていきましょう!
バンニング作業は主に倉庫やCFS(Container Freight Station)で行われます。CFSとは、コンテナターミナル近くにあるバンニング施設のことです。複数の荷主の貨物を混載し1本のコンテナへ積込する際は、こちらでバンニング作業を行います。
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事前準備
バンニングの第一歩は、事前準備です。以下の3つの重要な要素を確認します。
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貨物の梱包
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実際に貨物をバンニングするためには、まず貨物の荷姿を知ることがあります。どのような梱包をするか、あるいは荷主より梱包方法の指定があるかを確認します。
荷主より、既に梱包済みの状態で倉庫へ搬入される場合も、荷姿を把握することが大切です。
貨物の梱包種類については、カートンやパレット、スキッド等いくつか種類があり、こちらは以前MLGブログ「梱包の種類と覚えておくと良いこと。 国際輸送は梱包が重要!」でも触れています。
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コンテナの確認
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貨物の梱包が完了し、個数や重量、サイズの確認ができた後、どのサイズのコンテナを使用するかを決めます。
輸送形態がLCL(Less Container Load、複数の荷主の貨物を混載する)の場合、CFSでのバンニングが基本です。FCL(Full Container Load、1本単位でコンテナを借り切る)の場合はどのコンテナに収まるかの特定が必要となります。
ここで、貨物の段積可否についての確認も必要となります。段積み可否については、貨物の種類、梱包の形状や状態によって通常荷主より指示があります。
コンテナの種類についても以前MLGブログ「【徹底解説!】 コンテナの種類とサイズ・注意点」でご紹介しています。
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バンニングプランの作成
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貨物の梱包、コンテナ等が決定した後、「バンニングプラン」を作成します。
名前の通り、コンテナ内にどのように貨物を積み込むかの計画です。コンテナのスペースを最大限に活用しながらも、輸入地で取り出しやすいように配慮します。
実は、コンテナに貨物をぎっしり詰め込んでいると思われがちですが、実際にはぴったりに詰めるのは難しいため、船が揺れると貨物が動いてダメージが生じることがあります。 通常、20~30cmの余裕を持たせてプランを立て、その隙間に緩衝材を詰めています。この隙間を作ることで、輸入先で貨物を取り取り出しやすくなるというメリットもあります。
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コンテナ手配、業者の準備
バンニングを行うには、使用する空コンテナの手配が必要です。船会社に依頼し空コンテナを準備し、倉庫まで持ち込みます。倉庫までの持ち込みはドレー業者(コンテナを運ぶ業者)の手配も含まれます。事前にコンテナの受け渡し場所や時間、積み込んだ後の運搬先を確認しておきます。
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コンテナ内のチェック
コンテナをピックアップした当日に、まずコンテナに異常がないかを確認します。
コンテナがターミナルから出る際、船会社よりEIR(Equipment Interchange Receipt、コンテナの内装・外装状態を示す証明書)が発行され、ダメージ等があればこちらに記載されます。
倉庫に到着後、EIRではダメージなしと記載されている場合でも、コンテナの内装・外装にダメージがないか確認し、コンテナの写真を撮影します。この時、コンテナに穴あき、へこみ、汚れ等、貨物輸送に影響を及ぼす可能性のあるコンテナダメージを発見した場合は、コンテナの交換を行います。
輸送に影響を及ぼさない軽度の傷や汚れなどは、写真に収めて船会社に送り、後から輸入地側で修繕費等を請求されないように事前に連絡を行います。
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バンニング
いよいよ、バンニングスタートです!
バンニングプランに基づきコンテナに貨物を積み込んでいきます。
フォークリフトを使って貨物重量のバランス調整もしながら慎重に配置し、隙間には緩衝材を詰めて荷崩れを防ぎます。
また、貨物・コンテナに応じて積み付け(限られた空間に荷物や貨物を効率よく配置)や適切なラッシング(貨物を固定する作業)を行い、コンテナ内での貨物の安定性を確保します。バンニング作業には貨物によって異なりますが、40フィートのコンテナでは通常1時間程かかります。
バンニングの最後の工程として、「根留め」が行われます。 貨物とコンテナドアの間に20~30cm程のスペースを空け、この隙間に緩衝材として、カットした木の板を打ち込みます。 これにより、輸送中に貨物がドアの方へずれることを防ぎ、荷崩れを防止します。
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コンテナへのシール貼り
全ての貨物をコンテナにバンニング完了後、コンテナドアにシール(Seal)をします。
このシールはコンテナ専用の鍵で、一度施錠するとカッターなどの工具でしか開けられません。これにより、輸出先に到着するまでコンテナが未開封であることを確認でき、中継地点での貨物のすり替え、盗難・密輸の防止にも役立ちます。シールにはシリアルナンバーがあり、この番号はEIRにも記載されます。そのため、搬出の際に異なるシール番号で搬出を行うことができません。
シールの施錠箇所は右側の扉です。コンテナは右側の扉から開けるため、シールは図の通り右側の扉に取り付けます。
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輸出
シールしたコンテナはドレー業者のドライバーに「貨物搬入票」「機器受取書」「シール番号」と引き渡され、輸出準備が整います。 -
バンニングレポート作成
最後に、バンニングの状況をお客様に報告するための「バンニングレポート」を作成します。これには、バンニングの日付、異常の有無、作業の詳細などが含まれます。お客様が貨物の状態を把握し、安心して輸送を任せるための書類です。
- 写真撮影
コンテナのピックアップからバンニングが完了し、シールが掛けられるまでの間、貨物やコンテナの状態を随時写真に収めます。
これは、該当コンテナと貨物内容が一致していることを示すためだけではなく、輸入地での荷下ろしの際にダメージがあった場合やシールが切られていた場合など、出荷前に貨物・コンテナが無傷であったことを証明するための重要な記録になります。また、保険会社から賠償請求があった際にも、これらの写真が証拠として役立ちます。
写真撮影は以下の各場面で撮影しております。
- 空コンテナピックアップ時: コンテナの内装・外装を撮影
- バンニング作業中: 積み込み中の貨物とコンテナを撮影
- バンニング作業完了後: 積み込み完了後の貨物とコンテナを撮影
- コンテナのドアを閉めた後:コンテナ番号見えるようにコンテナを撮影
- シールを掛けた後:シールが正しくかけられており、シール番号が確認できるように撮影
<実はこんなバンニング方法が!>
輸送される貨物は、それぞれに特有の形やサイズ、性質を持っており、それに合わせたバンニングの工夫が必要です。
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コイル
鉄鋼製品・鋼材の一つであるコイルは、円筒形や円盤状のため、特別な取り扱いが必要です。そのままコンテナに置くと、船の揺れで転がる可能性があり、コイルやコンテナ自体にダメージを与えることがあります。
対策としては以下のような工夫が施されます:
- 木材ラッシング: コイルの周囲に木材を使用して固定し、転がりを防ぎます。
- バランスの調整: コンテナ内でコイルの重量やサイズを考慮し、左右前後の重さが均等になるように配置します。これは輸送中の重心の安定を保つために重要です。
このように複雑で手間のかかるコイルのラッシングを簡素化するために、商船三井と商船三井トレードの共同開発により「コイルポーター」が誕生しました。コイルポーターを使用することで、これまで熟練工による大工仕事や重労働に頼っていたコイル輸送が、軽量素材を用いた組み立て式のキットにより、誰でも簡単かつ安全に行うことが可能となりました。
☞コイルポーターについての詳細はこちら
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段積み不可
バンニング作業内の事前準備で少し触れた段済み不可の貨物について、「段積み不可」とは、貨物の上に他の貨物を積み重ねることができないことを意味します。これは、壊れやすい貨物や形状が特殊な貨物に当てはまります。
バンニング時のポイントとして、その上に他の貨物を載せることができないため、どうしてもコンテナ内に空間(デッドスペース)が生じます。
LCLの場合は、他荷主の貨物と共に混載をするため、デッドスペース分の料金が課される場合があり、FCLの場合は、コンテナ1本を借り切りしているため、デッドスペースができても料金はコンテナ1本分のみとなります。
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危険品
火薬やガスなどの危険品は、バンニングの際に特別な注意が必要です。これらの貨物は、輸送中に発生するかもしれない事故を最小限に抑えるために、特別な規定に従って取り扱われます。
主な注意点:
- コンテナドア側への配置: 危険品は、コンテナのドア側に配置されます。これは、緊急時にすぐに取り出せるようにするためで、IMDG(国際海上危険物規程)で義務付けられています。
- 専用の梱包とラベル: 危険品は、特定の安全基準に従った梱包が必要であり、適切なラベルを貼ることも義務付けられています。
<バンニングは海上輸送中の貨物ダメージを防止する重要な作業>
今回は、貨物がコンテナに積み込まれる「バンニング(Vanning)」について、詳しくご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
バンニングは、広い海を数日から数週間かけて揺れながら運ばれる貨物のため、出港前の綺麗な状態の貨物を仕向地まで保つための重要な作業です。
バンニングの過程では、貨物の梱包状態やコンテナの選定、積み込み方法など、さまざまな工夫が凝らされています。これらの作業により、輸送中のダメージを最小限に抑え、目的地でのスムーズな荷下ろしを可能にしています。
弊社では、バンニング作業の一環として「バンニングレポート」の作成と提供も行っております。これにより、お客様は貨物がどのようにコンテナに積み込まれたかを確認することができます。もし、送った貨物のバンニング状況について知りたい場合は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
輸出先でのコンテナからの荷卸し作業、いわゆる「デバンニング」については次回詳しくご紹介する予定です。バンニングと同様に、デバンニングも輸送の一環として非常に重要なステップですので、どうぞお楽しみに!