【フォワーダーが歌詞解説】 輸入コンテナディスパッチ / チャラン・ポ・ランタン
突然ですが、皆さんは、輸入コンテナディスパッチという楽曲をご存じでしょうか?
物流業界の複雑な手続きあるあるが歌詞に散りばめられており、業界関係者なら思わずクスっと笑ってしまうような面白くもカッコいい、珠玉の1曲です。
因みに、作詞・作曲を手掛けられたチャラン・ポ・ランタン小春さん、なんと、アコーディオンを個人輸入されており、その実経験に基づき生まれた楽曲のよう。 通りで歌詞の納得感が違います。
さて、今回は、そんな輸入コンテナディスパッチの歌詞に出てくる物流用語や、輸入貨物の引き取り方法について、順番に解説していきたいと思います!
楽曲と歌詞は以下リンクよりご覧になれますので、ぜひ照らし合わせながら、最後まで記事をお楽しみ頂けると幸いです。
歌ネット(歌詞) : https://www.uta-net.com/movie/336986/
<ディスパッチ、Delivery orderとは?>
ディスパッチ、Delivery orderとは、端的にいうと輸入コンテナを引き取る為に必要な書類のことです。
輸入コンテナを引き取るにあたっては、複数のステークホルダーと書類のやり取りをせねばならず、その際の混乱が、歌詞からも伝わってきます。 小春さん、お気持ちお察しいたします…。
ということで、具体的にどのような書類や手続きが必要になるのか、簡単に整理してみました。
>>船会社に対する手続き
- オリジナルB/L(Bill of lading)の場合は、原本を船会社(日本側)に差し入れる
- Arrival noticeに記載されたチャージ諸費用を支払う
※Arrival notice:貨物が輸入港に到着する数日前に船会社が発行する貨物到着案内のこと
→手続き完了後、船会社より【①Delivery order】が発行される
>>コンテナヤードに対する手続き
- コンテナを引き取りたい日取りで、コンテナ搬出依頼を行う
→手続き完了後、コンテナヤードより【➁コンテナ搬出票(ディスパッチ)】が発行される
>>税関に対する手続き
- 輸入通関手続き ※輸入許可になった状態でCYよりコンテナを搬出する場合
→手続き完了後、税関より【➂輸入許可書】が発行される - 保税運送承認手続き ※未通関の状態でCYよりコンテナを搬出する場合
→手続き完了後、税関より【➂保税運送承認通知書(運送目録兼用)】が発行される
>>その他の手続き
- コンテナを運ぶ為の車両(=ドレー)とドライバーを手配する
- ドライバーにコンテナ搬出票(ディスパッチ)を渡し、コンテナ引き取りを依頼する
【①Delivery order】【➁コンテナ搬出票(ディスパッチ)】【➂輸入許可書/保税運送承認通知書(運送目録兼用)】の情報を揃え、コンテナヤード側での確認が完了して初めて、該当のコンテナを引き取ることができるようになります。
煩雑な手続きに思えますが、誤って持ち主でない人にコンテナを引き渡しちゃった…! なんてことが起こらないよう、このような厳重な手続きが行われている訳です。
<検査指定票、税関旗ってどんな時に使うの?>
歌詞によると、小春さんのコンテナ貨物は税関の大型X線検査に該当してしまったようです…。
検査指定票や税関旗は、税関検査の際に必要となります。
税関検査は、 その検査方法によって、 大きく3つに分けられます。
1. 見本確認
貨物の一部を抜き取って税関に持ち込む。
数量の確認は必要なく、内容の確認のみを行う為の検査。
2. 一部指定検査
指定された貨物を梱包単位ごと税関に持ち込む。
梱包(カートンやケース)内の数量と内容が申告内容と一致するか確認する為の検査。
3.全部検査
貨物を全量確認する為の検査。
FCLのコンテナ貨物が全部検査に該当した場合は、 大型X線検査となるケースが多いです。
その場合の検査の流れを簡単にまとめてみました。
- 税関へ輸入申告を行った結果、税関検査(区分3)に該当する
- 検査内容と日時確定後、税関が【検査指定票】を発行する
- 税関から【税関旗】を受け取る
- 【検査指定票】と【税関旗】をドライバーに渡す
- ドライバーは【コンテナ搬出票(ディスパッチ)】と【検査指定票】と【税関旗】をもってコンテナヤードにコンテナを引き取りにいく
- ドライバーは【コンテナヤードの搬出印(搬出日時の記載)がある検査指定票】と【EIR】を受け取り、税関X線検査場に向かう
※EIR:コンテナダメージの有無など外観状態について記載された書類のこと - 検査場に到着したら、ドライバーは【検査指定票】と【税関旗】を税関職員に渡し、コンテナをシャーシに乗せた状態のまま、コンテナごとX線検査を受ける
- X線検査の結果に問題が無ければ、通関許可となる
- 輸入許可後、検査場を出て自由にコンテナを輸送できるようになる
因みに、税関旗というのは、1m程の大きさで、「税関検査」と記載された旗のことです。ドライバーがドレーのヘッド部分にこの旗をつけてコンテナを引き取りに行くと、順番待ちすることなく、優先的にコンテナをピックアップすることができるというアイテムなのです。
<HS CODE(税番)ってどうやって確認するの?>
世界中の貿易において、日々、さまざまな商品が輸出入されていますが、それらの商品を分類する為の世界共通の分類番号のことを「HSコード」と呼んでいます。
輸入貨物の種類によって、関税が異なるので、輸入したい貨物が一体どのHSコードに該当するかを確認したうえで、輸入申告を行う必要があります。
全てのHSコードは、実行関税率表というものに記載されており、物流業者間でよく使われるものとして、日本関税協会が発行している青色の冊子(通称、ブルータリフと呼ばれるもの)がありますが、約3kgととても分厚く、内容がずっしりと詰まっています。
歌詞にもあるように、 小春さんの輸入貨物であるアコーディオンは「9205. 90-020」というHSコードに分類されます。
HSコードはネットでも調べられますので、以下サイトより一度検索をしてみると面白いかもしれません。
■税関「品目分類のページ」
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/item_classification.htm
■税関「関税分類検索ページ」
https://www.customs.go.jp/searchtc/jtcsv001.jsp
■日本関税協会「WEBタリフ」
ただ、数多あるHSコードの中から、該当するコードを選び出す作業(=品目分類と言います)は、小春さんにとって、きっと骨が折れたに違いありません…。
<物流業界のこれから>
今回は、輸入コンテナを引き取る際、実は、裏側で沢山の手続きが行われていることを説明させて頂きました。
国際物流手続きは従来紙ベースで行われてきた為、FAXや判子を要するやり取りが根強く残ってるのが実情です。
一方、各港湾関係者を繋ぐプラットフォームシステム NACCSの普及に伴い、NACCSを導入している企業や省庁間の一部やり取りにおいては、次第に紙からデータへと置き換えられつつあります。
また、そうした旧体制から脱却すべく、日々試行錯誤しながら新たな貿易プラットフォームが誕生しています。
私ども商船三井ロジスティクスは、そうした最新のテクノロジーを取り入れつつ、最も効率的かつ高品質な輸送サービスをご提供しております。
国際輸送に関するお困り事がございましたら、ぜひともお気軽にお問合せください!
この記事をお読みいただいた後は、ぜひ、輸入コンテナディスパッチを聞き返してみてください。
きっと、チャラン・ポ・ランタンさんの歌詞に込められた思いが、より一層伝わってくること間違いなしです。
歌ネット(動画・歌詞) : https://www.uta-net.com/movie/336986/
(注) 本記事におけるチャラン・ポ・ランタン様の画像は、著作権元である合同会社ゲシュタルト商会様に掲載許可を頂いております。
無断転載はご遠慮ください。