2024年4月12日 物流の基礎知識
運送約款(B/L約款・AWB約款)には何が書いてあるの?荷主は必ず知っておきたい責任について
電車に乗るとき、バスに乗るとき、飛行機に乗るとき、宅配便を送るとき。
どんなルールがあるんだろう、万が一事故の時はどういう補償が受けられるのだろうと考える人はほとんど居ないと思います。でも各社は運送約款というものを定めており、そこに基本的な決まりは全て書いてあります。
国内・国際貨物運送においても、同様に運送約款が定められています。今回は、通常の貿易業務では目にすることない、一方で何かあった際には重要になる運送約款のうち、荷主にとって重要な項目を説明します。
<運送約款は定型約款の一種>
運送約款は約款の中でも重要なものとして民法548条の2に定義される「定型約款」の一種です。
この「定型約款」が適用される取引においては、物流会社側が毎回内容を説明しなくても、約款の内容が適用される決まりになっています。もっとも、物流会社側には予め取引に関しては約款が適用されるという表示をするか、相手先の合意を得る必要があります。
運送約款は物流会社側に表示義務があるので、一定規模以上の物流会社はウェブサイトに掲載しています。
弊社の場合は、以下リンクよりご確認いただけます。
https://www.mol-logistics-group.com/support/#stipulate
<これだけはお願いしたい! -約款上の荷主の責任->
①貨物内容の申告
物流会社が輸送を引き受けるにあたり必ず確認する項目の一つが、どんな貨物(内容品)なのか、という点です。
例えば貨物が危険物であれば、特別な梱包を施さず船や航空機に搭載してしまうと、輸送中の事故の原因となってしまう可能性もあります。フェリーや旅客機の貨物スペースは、乗客の乗るスペースの下にありますので、もし火災が発生した場合には貨物のみならず乗客の命の危機に直結します。他にも生きている動物や貴重品の場合には、それ相応の取扱いが必要になりますし、後述の事故時の補償にも影響しますので、貨物の内容や取り扱い上の注意はできるだけ詳細に伝えてください。
特に申告が必要な貨物
- 危険物
例えば機械部品でも接着剤や塗料等危険物に該当するものが含まれている場合があり、そのような「隠れた危険物」
にご注意ください。 - 貴重品(貴金属・紙幣・宝石・美術品・骨董品)
- 生きているもの
- 腐敗しやすいもの
- 遺体
②貨物の梱包
運送約款では、荷主は輸送に耐えうる強度の梱包を施したうえで物流会社に委託する、と謳っています。
梱包が不十分なため発生した貨物の破損や、他の貨物への損害は、物流会社は補償できませんので、十分な強度の梱包を手配する必要があります。
弊社含め多くの国際物流会社では梱包を含めて請け負うこともできますので、不安な場合は一度ご相談ください。
③運送状記載内容の確認
運送約款では、運送状の記載内容についても荷主が正確であることを確認し責任を負う、と謳っています。国際運送においては物流会社が運送状(B/L、AWB等)を代理作成することが多いですが、運送状記載内容は引渡しや事故時の根拠となるものですので、必ず内容を確認してください。
<物流会社の損害賠償 -責任制限額に注意->
物流会社は細心の注意を払って大切な貨物を運びますが、それでも貨物が壊れてしまったり、無くなってしまったりすることがあります。その時は物流会社にInvoiceのCIF金額までの賠償責任が発生しますが、国際輸送の運送約款では物流会社の責任制限額が決まっており、それ以上の賠償は義務ではないということになっています。なお、国内輸送においては正常に配達された場合の金額が賠償額となり、責任制限はありません。
規定は輸送区間や物流会社によって異なる場合がありますが、一般的には以下の通りです。
- 国際海上輸送
1包装単位当たり666.67SDR(*)もしくは、1kg当たり2SDRのどちらか高いほう
※米国向け/米国発海上貨物については、一包装単位当たり500USDとなります。
- 国際航空輸送
1kg当たり22SDR
*SDRとは、国際通貨基金IMFが定める特別引出権(Special Drawing Rights)のことで、主要国通貨の価値によって定められ、SDRの価値も毎日変動します。
責任制限が適用されない例外が2つあります。1つは、物流会社が故意に貨物を損傷させた場合。もう1つは、貨物が貴重品等高額なもので、その価格が物流会社に通知され、貨物価格に応じた運賃が支払われた場合です。
責任制限額以上の損害については、通常物流会社からの賠償は受けられませんので、貨物の価格と賠償額の差額の損失に備え貨物保険の付保をお勧めします。
弊社では保険代理店として貨物保険の手配も行っておりますので、ご入用の際はぜひご相談ください。
物流会社の免責事項に留意
以下の場合は、物流会社は免責となり、責任制限額に関わらず賠償が受けられませんので、ご注意ください。
- 天災/戦争
- 貨物自体の固有の欠陥、梱包の不備
- 公的機関の措置
- 遅延 ※貨物自体の価値が下がった場合や、故意によるものは免責になりません
- 荷主の詰めたコンテナ
- 出訴期限を超過した求償(事故報告)
海上輸送の場合は、「共同海損」にも注意
海上輸送で航海中に事故が発生し、一部の貨物が流出・破損した場合(せざるを得なかった場合を含む)や、自力で航行できずえい航が必要になった場合、もし自分の貨物が無事に着いたとしても、損害賠償請求を受ける場合があります。それが「共同海損」という仕組みで、無事に到着した貨物でこのような損害・費用を按分して負担するため、自らの貨物に損害が無かったとしても全体の損害額の一部を負担することになります。これは、被害を受けた貨物や緊急の支出のおかげで残りの貨物は無事であった、むしろその犠牲や費用がなければ沈没等で全ての貨物が損害を受けていた、という考え方で、昔からの商習慣によるものです。
<もし事故が起こったら -荷主の通知義務->
もし貨物を受け取ったときに壊れている、無くなっていることに気が付いた場合には、すぐに物流会社へ報告してください。運送約款には、貨物の受取から概ね1~2週間以内に異常があれば知らせることと書いてあるほか、配達から年単位の時間が経過すると、運送中の事故と見なされず、賠償が受けられません(弊社の場合、国際海上貨物の場合配達日から1年、国際航空貨物の場合2年。各社の約款により異なります)。
時間が経過すればするほど、事故原因の究明が難しくなり、解決が難しくなりますので、貨物を受け取った際には、速やかに異常がないか確認し、異常があればすぐに物流会社へお知らせください。
<運送委託の際は運送約款の確認が大切>
以上、運送約款についてご紹介しました。契約に使う言葉で書かれているので、難しい文章になっていますが、知っていないと不利になる場合もあるので、運送委託の際にはぜひご確認いただき、ご不明点あれば利用する物流会社へお問い合わせください。運送約款を知り、うまく物流会社とお付き合いください。