2023年11月17日 物流の基礎知識
【アパレル輸入担当者必見】評価申告,暫八,EPAってなに?【詳しく解説】
今回は、アパレル輸送における当社のベテランスタッフ監修のもと、制作した記事をお送りします。
アパレル製品の輸送・日本への輸入を担当されている方には、必見の内容です。
トラブルになりやすいポイントや、事前に確認すべきことをまとめましたので、是非とも参考にしていただければと思います。
<輸送時の注意点 ~ダメージを防ぐための梱包方法~>
アパレル輸送の梱包はカートンが主流となっています。
一番多いダメージリスクは、水濡れです。
これを防ぐためには、カートンの中にビニールを敷くなど、梱包方法を工夫することでリスクを抑えられますが、その分費用も上がってしまうので、どうしてもダメージを起こしたくないような貨物については、ビニールや強化段ボールの使用を検討するのが良いでしょう。
また、海外ではまれに輸送途中や積み替えの際に貨物の紛失が起こります。
アパレル輸送は、カートン(バラ)の場合も多く、小さい分紛失のリスクが高まります。
ダメージや紛失などの万が一に備えて、必ず、外航貨物海上保険を付保するようにしましょう。
<輸入通関時に知っておきたい3つのこと ~評価申告・EPA・暫八(ざんぱち)~>
アパレル製品を日本で輸入通関するにおいて、「評価申告」「EPA」「暫八」への理解を深める必要があります。
「評価申告」は、適正な金額で輸入申告を行う為の制度で、「EPA」と「暫八」は輸入時の関税を軽減させる為の制度です。
基本的な通関書類として、「船積書類(Invoice、Packing List、B/L、Arrival notice等)」と「製品の絵型」が挙げられますが、 もし「評価」「EPA」「暫八」が絡む申告の場合、基本書類に加えて、制度ごとに定められた書類を揃えて申告時に提出する必要があります。
それでは、これら3つの制度について、順番に説明をしていきます。
<輸入申告: 評価申告について>
評価申告とは、納税申告に際し、申告書に添付される仕入書、運賃明細書等のみでは課税価格の計算の基礎が明らかでない場合に、当該課税価格の計算に必要な事項を申告するものです。
(引用:税関HP https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1408_jr.htm)
そもそも、輸入申告における課税価格は、「課税価格=現実支払い価格+加算要素」と定められています。
※課税価格:関税の算定基礎となる金額のこと
現実支払い価格とは、輸出者が輸入者に支払った(支払うべき)金額、すなわち、インボイス金額を指します。そして、加算要素とは、下図に記載されたインボイス金額以外の費用のことを指します。
引用: https://www.kanzei.or.jp/tokyo/tokyo_files/pdfs/other/zeikan201706016_1b.pdf
例えば、ボタンやタグといった副資材を日本から無償で提供し、中国の工場にて製造した洋服を日本へ輸入するとします。
この場合、通常、中国側が発行するインボイス金額には、無償提供分の副資材の金額は含まれません。しかし、無償提供された原材料費は、加算要素と定められています。
その為、副資材の金額を加算して輸入申告を行うこととなりますが、このように加算要素を計算して申告することを「評価申告」と呼んでいます。
アパレル製品は、無償提供の材料を使用して製造されることも多く、輸入申告時には、評価申告の必要有無をきちんと把握せねばなりません。
なお、評価申告は「評価申告書」の提出をもって行われます。以下、評価申告書の様式サンプルですが、こちらは、税関HPよりダウンロード可能です。
評価申告書雛形
https://www.customs.go.jp/kaisei/youshiki/form_C/C5300.pdf
<輸入申告: EPA(経済連携協定)について>
アパレル製品の多くは、中国やベトナムなどで製造されていますが、これらの製品を日本へ輸入する場合、RCEPや日ASEANといったEPA(経済連携協定)を利用することで、通常よりも低い関税を適用できるケースがあります。
また、バングラディシュやミャンマーといった後発開発途上国(LDC)から日本への輸入においても、特恵関税を用いることで、低い関税率での輸入が可能な場合があります。
ただし、EPAや特恵関税制度を利用するには、輸入産品が原産地基準を満たしている必要があります。 とりわけ、アパレル製品は、様々な国の部材を用いて製造されることが多いため、各部材の原産地や調達ルートを把握したうえで、品目別規則や積送基準といった要件をクリアできているか確認せねばなりません。 加えて、COOやFORM A等の原産地証明書類の手配も行う必要があります。
<輸入申告: 関税暫定措置方第8条(暫八)について>
暫八(ざんぱち)とは、関税暫定措置法第8条の略称であり、加工再輸入減税のことを指します。 日本から輸出された原材料を使用して、海外で製造した製品を日本へ輸入する場合、日本から輸出した原材料分の金額について関税が掛からないという減税制度の一種です。
暫八を利用する為には、以下の要件を満たす必要があります。
① 本邦(日本)から輸出される原材料が暫八の対象物品に該当すること
➁ 輸出原材料を使用して加工又は組み立てが行われていること
➂ ①の輸出許可日から、原則1年以内に特定の製品を輸入すること
輸出申告の際に必要な書類としては、「加工・組立輸出貨物確認申告書」や「契約書」、また、求められた場合には「生地の見本サンプル」などを提出する必要があります。
また、輸入申告時には、「原材料の輸出許可書」に加えて、「加工・修繕・組立製品減免税明細書」や「附属書」といった書類を揃えて、きちんと減税要件を満たしていることを証明する必要があります。
なお、EPAと暫八は併用することができません。
ですので、製品仕様上どちらの制度を利用できるか、または、メリットの大きさを考慮して、選択することとなります。
<輸入申告: 税関の指摘事例やワシントン条約について>
冒頭で、輸入通関時の基本書類として「製品の絵型」が必要であるとお伝えしました。
「絵型」とは、衣類の形状を図や写真で表した書面を指しますが、書面上の図や文字が不鮮明なケースや、書面だけでは製品の詳細な仕様が判別できないケースにおいて、税関より、追加情報の提出や検査での現物確認を求められることがあります。ですので、書面は可能な限り鮮明なものを準備すると良いでしょう。
また、冬物コートなどを輸入する場合、「ファー付きのもの」には注意が必要です。
フェイクファーではなく、実際の毛皮を使用したリアルファーであれば、その動物(学名)がワシントン条約の規制対象種である可能性があります。その場合、輸入申告時には、輸出国側が発行した「CITES輸出許可書」や、経済産業大臣が発給する「輸入承認証」「事前確認書」といった書類の手配が必要です。
ワシントン条約(CITES)の詳細は、経済産業省のHPにも掲載されておりますので、ぜひともご参考ください。
ワシントン条約規制対象貨物の輸入承認手続き (METI/経済産業省)
<アパレル品における豊富な輸送実績とノウハウ>
以上、アパレル輸送において知っておきたいことについて、お伝えさせて頂きました。
当社は、数多くのアパレル企業様より輸送のご依頼を頂いておりますので、安心して輸送をお任せ頂けます。
評価・EPA・暫八以外にも、関税割当を用いた輸入申告や、ハンガーコンテナを用いた輸送など、ご商材に合わせて最適な物流設計をご提案致します。
アパレル輸送に関するお困りごとなどございましたら、ぜひともお問い合わせください。